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巻頭エッセイ


第784号 鮎沢さん(70)「季節の色46」:抹茶色

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■ 1.巻頭エッセイ:
     鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.46
                 ≪【抹茶色】まっちゃいろ≫ (2017,10/4 水)
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10月に入り、もうすっかり秋ですね。

お茶は日本の文化と切り離せません。

今では何にでも抹茶味があり、鎌倉のソフトクリームも抹茶が人気
です。

オバマ大統領が鎌倉大仏を訪れたときに、その近くの抹茶アイスク
リームを食べたとか(ほんまかいな?)で、一時は「オバ抹茶」ア
イスクリームとして売られていました。

さて、その抹茶ですが、なぜに抹茶色がこの季節?

と思って少し調べてみました。

一般には茶摘みは立春から88日目にあたる八十八夜だと言われていま
す。しかし実際には1年に3回ほど茶摘みが行われています。

いわゆる新茶は4月下旬から5月下旬にかけて摘み取られたお茶のこと
で、6月中旬から7月上旬に摘まれた茶葉を二番茶、7月中旬から8月下旬
にかけて摘まれた茶葉は三番茶と呼ばれています。

主に抹茶の原料となるお茶は「てん茶(碾茶)」と呼ばれています。
玉露と同じように栽培された生葉(一番茶)が原料となります。

名称の「碾(てん)」は挽臼を表していて、挽臼で粉砕するためのお茶
であることから「てん茶(碾茶)」と呼ばれ、出荷直前に石臼で挽いて
抹茶として出荷されるのだそうです。

お点前(おてまえ)における濃茶(こいちゃ)用の抹茶は、以前は樹齢
100年以上という古木から摘採した茶葉が使われていたようです。

以前ポルトガルやスペインを旅したときに、オリーブの果樹園をあちこ
ちに見かけましたが、それが数百年の古木で、なよなよしたオリーブの
樹しか知らなかったので驚いたことがありますが、抹茶もそのような古
木が使われていたなんて、伝統っていうのは一朝一夕では形成されない
ということがよくわかります。

それはともかく、なぜ抹茶色がこの季節? ということについてなので
すが、高級な碾茶と玉露は一番茶のみ、煎茶は二番茶まで使用している
そうです。

となると、抹茶の旬は4月下旬から5月下旬にかけての新茶の季節じゃな
いかって思ってしまいますが、そうでもないようです。

春に摘み取られる新茶 (一番茶)は、その年で最も早いお茶であり、主に
玉露や抹茶などの高級茶の製造に用いられるようですが、二番茶の摘採時
期の6月中旬から7月上旬にかけて碾茶の収穫を行う場合もあるようで、一
番茶が抹茶の旬だとも言えないようです。

そして、お茶の旬を楽しむ方法として、新茶をひと夏眠らせることで茶葉
が熟成させた蔵出し茶があり、通常よりもコクと旨味を持ったお茶となる
ようです。

そこで、抹茶や玉露など深い味わいを愉しむお茶の場合、蔵出し茶の方が
おいしいとされています。

そして、もう1つ抹茶の旬が4月下旬から5月下旬ではないという理由があり
ます。

村田珠光・武野紹鴎・千利休らによって大成された茶道では、摘み取った新
芽を蒸らして乾かした後、茶壺に入れて口をふさぎ、冷暗所にて大切に保管
し、11月を迎えたら茶壺の口を切り、新茶として味わっていたそうです。

というわけで、茶道では11月に茶壺の口を切り、新茶を頂く「口切の茶事」
という特別な茶事が行われています。

となると、抹茶の新茶は11月?

うーん。

となると、どうして10月のこの時期に抹茶色?

鮎沢さん、教えて!?

それでは、鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.46
≪【抹茶色】まっちゃいろ≫を、どうぞお読みください。

今日もすてきな一日を!

                           尚 記


       ………○…………○…………○………


抹茶色は茶道のお点前で使われる、あの「お抹茶」の色。

実際には「お抹茶」を飲んだことがない人でも、この色はよく知って
いますよね。

日本人は、本当に抹茶味が好きです。

たとえばコンビニのスイーツのコーナーを見たらわかります。

羊羹やどら焼き、あんみつなどの和菓子はもちろん、アイスクリーム、
ロールケーキにプリンなどの洋菓子にも抹茶は使われており、その
種類の多さに驚かされます。

コーヒーショップに行けば、もはや定番となった抹茶ラテがあり、
ドリンクにも抹茶は浸透しています。

これほどまでに現代の味覚と融合した、いえ、それにとどまらず
日々「進化」している食材は、ほかにないのでは? と思ってしまい
ます。

見た目にもインパクトのある強い黄緑色と、甘さを引き立てるほろ
苦さと、日本の粋を感じさせるお茶の香り、抹茶には「色・味・香り」
の三拍子そろった魅力があります。

また、わらび餅のように外側にまぶしても良し、洋菓子のクリーム
やケーキの生地などに練り込んでも良し、溶かして甘みをつけて
ドリンクにしても良し、と使い方も自由自在です。


日本人とお茶のつながりは古く、中国からお茶が伝来したのは8世紀
の終わりごろとされています。

しかし、まだこの時点で粉末にする技術はなく、茶葉をお湯に入れて
飲むだけでした。

当時のお茶は嗜好品ではなく、眠気を覚ます薬のような役割りに
すぎませんでした。

抹茶としての飲み方が伝わったのは、鎌倉時代。

栄西という僧が、今の中国、当時の「宋」の国に留学し、抹茶の
製法や効能、飲み方などのノウハウを持ち帰りました。

これを著した『喫茶養生記』は鎌倉幕府の3代将軍・源実朝に献上
され、抹茶は薬として盛んに飲まれるようになりました。

僧・栄西から、日本の「抹茶」の歴史がはじまったのです。


茶葉を粉末にする専用の石臼「茶臼」が発達し、抹茶に適した茶葉
を栽培する農法が進歩していきます。

特に京都市宇治で、日本独自の栽培法が生まれました。

寒かった宇治では、茶摘みの前に、霜よけのためにわらで作った
傘をかぶせていましたが、それが美味しい茶葉になる決め手となり
ました。

今も宇治の抹茶が有名なのは、こんな歴史があったからなのですね。

一方、大名たちは茶会を通じて客人をもてなしたり、富や名声を
誇示したり、戦国時代の戦略と「茶の湯」が結びついていきます。

この歴史のなかで、千利休が登場してくるわけです。

そこから500年近く経った現代、抹茶がこれほどまでに庶民の
生活に根づき、しかもお茶というよりお菓子に欠かせない材料に
なっているとは・・・。

私たちの文化は姿形を変えて脈々と続いています。

この「抹茶色」という名前も同様に、何百年も続いているのです。


(※こちらで画像とともに掲載をしています。
 https://ameblo.jp/aurasoma-unity/entry-12315765921.html


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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール

有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/


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