第422号 鮎沢玲子さん(9)「日本の色で-1」:藍色
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 1.巻頭エッセイ:
鮎沢玲子さんの日本の色で学ぶオーラソーマ Vol.1
≪ロイヤルブルー≫ (2012,08/01)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
オーラソーマを日本の色で眺めてみたらどのように見えるのでしょ
うか?
それが今回からの企画「鮎沢玲子さんの日本の色で学ぶオーラソー
マ」です。
実はイギリスのツアーの際に、鮎沢さんといろいろとお話しをする
機会があり、このオーラソーマ通信についても話が及びました。
これまでのように季節の色に合わせてオーラソーマの色について書
いていただくのはもちろん素晴らしいのですが、でも、もっと日本
の色の観点からオーラソーマの色を見ていくことはできないだろう
かということを話しているときに、では、カラーローズの色を日本
の色で見ていくのはどうかという話になりました。
オーラソーマのシステムはイギリスが発祥ですので、オーラソーマ
で学ぶ内容もヨーロッパの歴史や概念で彩られています。
それはそれで興味深いのですが、日本人にとってはピンとこない概
念なども多々あります。
これまで日本になかった概念を、オーラソーマシステムを学ぶ過程
において、素直な気持ちで情報を理解し、咀嚼するプロセスは必要
でした。
しかし、今現在オーラソーマは、ずっと一位だったドイツを抜いて
日本がいちばん盛んな国になっています。
すでに20年近くの歳月が経ち、多くの日本人ティーチャーが誕生
しています。
これまではオーラソーマを日本に紹介し、定着するまで吸収し、学
ぶプロセスでしたが、これからはもっとオーラソーマに貢献してい
くプロセスがあってもいいのではないか、ということを思います。
オーラソーマのタロットで言えば、アウトワードジャーニーからリ
ターンジャーニーへの転換です。
この考えを教えてくれたのは、ドイツでオーラソーマのショップを
初めてオープンし、オーラソーマのトップティーチャーでもあり、
和尚アートユニティでのティーチャーでもあったコマラ・ローデ先
生(現サウンドレゾナンス創始者)です。
彼女がオーラソーマを教えているときに、特に象徴としての色など
については、日本のシンボルなど、もっと日本になじみのある色を
つけ加えることを奨励していました。
日本という国は、世界でも最も古く歴史のある国です。
そして、日本の歴史から醸成されている日本の知恵を世界に紹介し
ていくことで、日本はもっと世界に貢献できる国になっていくので
はないかと思います。
ヴィッキーさんは、オーラソーマは古代の知恵を新しい革袋に入れ
るようなものだと言っていましたが、そうであれば、日本の知恵は
ぜひオーラソーマの革袋に入れるべきものです。
そうすることで、オーラソーマを通して、もっと日本の知恵が世界
にも伝わることにもなるのではないかと思われます。
そういう意味で、日本の色でカラーローズを見ていくことは、新し
いオーラソーマのヴィジョンを開いていく試みとも言えるかもしれ
ません。
では、鮎沢玲子さんの日本の色で学ぶオーラソーマ Vol.1
≪ロイヤルブルー≫ をお楽しみください。
尚 記
………○…………○…………○………
オーラソーマの授業では、まず「色の言語」を学びます。
それはオーラソーマのシステムにおいて木の幹のように基本的な部
分です。
ティーチャーとして活動するうちに、私はこの「色の言語」をもっ
と日本人ならではの感性で探求し、みんなのなかに定着させること
はできないかと考えてきました。
毎月1回連載中のこのコーナーですが、今月から趣向をかえて「カ
ラーローズ」のなかの1色をピックアップし、日本の色名、歴史、
文化、季節感などと関連付けてお伝えしていこうと思います。
今月、最初に取り上げる色は「ロイヤルブルー」です。
日本のよく知られた色名で、ロイヤルブルーに最も近いのは「藍色」
です。
藍は人類最古の植物染料と言われ、藍染は世界中に広く分布してい
ます。藍による染色方法は特に我が国だけのものではありません。
たとえばブルージーンズのインディゴも同じ藍で染めたものです。
日本では桃山時代から江戸時代にかけて木綿の普及に伴い、藍染が
盛んになりました。藍染の暖簾(のれん)や、職人や商人の仕事着
としての木綿の着物、店の屋号や紋などを染め抜いた印半纏(しる
しばんてん)または法被(はっぴ)など、いわば江戸時代の職場の
制服的なもの、仕事にまつわるところに多く使われました。
今も会社の制服などにロイヤルブルーに近い色がよく使われている
のは、この名残なのかもしれません。
なかでも最も象徴的なのは、やはり「暖簾」でしょう。
今でも伝統ある老舗(しにせ)のことを「古い暖簾」と言ったりし
ます。
藍染の暖簾は、歴史と伝統がある「正統派」の証し。
当然、「権威」を表しています。
そして確かな仕事をする「職人気質」の表れでもあります。
ロイヤルブルーの色の言語にぴったり合致していると思いませんか。
もうひとつ、ロイヤルブルーに近い色で面白い名前のものがあるの
でご紹介します。
それは江戸時代に生まれた色名で「納戸色」(なんどいろ)。
なぜにこんな名前が? と思いますよね。
でも色名の由来は諸説あり、いまひとつはっきりしないのです。
由来のひとつ目は納戸(物置)の暗がりを表すような色だから。
二つ目は、納戸の入口に掛ける垂れ幕の色によく使われていたから。
三つ目は、将軍の金銭や調度品、衣服などの出納を担当するお役人
(御納戸方)の制服の着物の色だったことから。
この三つ目の理由が、最もロイヤルブルー的かもしれません。
出納係りのお役人の堅実さ、真面目さ、権威を表現していると思い
ます。
江戸時代にこの色はたいへん流行し、男性の着物の裏地や風呂敷な
どに盛んに使われました。
納戸色は藍色に比べて、やや緑味が入った渋い青。江戸末期には女
性の着物にもよく使われ、明治、大正まで流行したそうです。
事実、納戸色は他との色合わせがしやすく、和服の色としてはとて
も重宝です。目立ちすぎず、有能な「名脇役」といった感じの色な
のです。名前の奇抜さとは対照的ですね。
いかがでしたか?
このように、毎回カラーローズのなかから1色を選んで、日本の色
に対応させていきます。
また関連があり、興味深い日本の色もご紹介します。
よろしかったら、どうぞご感想をお寄せください。
(※こちらで画像付きで掲載をしています。
http://ameblo.jp/aurasoma-unity/entry-11317250528.html )
………○…………○…………○………
鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。