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巻頭エッセイ


第698号 鮎沢さん(59)「季節の色36」:枯野・枯色

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■ 1.巻頭エッセイ:                (2016,12/7 水)
     鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.36
             ≪【枯野・枯色】かれの・かれいろ≫
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いよいよ12月。

朝6時の気温は、急に3度まで下がったと思ったら、次の日は13
度で春のような風が吹いていたり。

温暖を繰り返しながらも、着実に、一歩一歩冬が近づいてきています。

今回の日本の色は「枯野」

オーラソーマはイギリス発祥なので、色を学ぶと同時に、西洋文化
も学ぶことになります。

でも、やっぱり日本人は日本の色を学ぶことで、より身近に色を
感じることができますね。

車の運転の初心者マークが若葉マークと言われていたのに対して、
70歳以上の運転者がつける高齢運転者標識は、その色と形状が
枯れ葉のようでもあったので枯葉マークなんて言われていました。

いかにもという感じだったのですが、それには批判が強かったらしく、
2011年にはデザインが変更されて、四葉のクローバーのような
形になって、紅葉に似ているというので、紅葉マークというように
なったようです。

でも、枯色の良さを知れば、枯葉マークでいいんじゃないかと思い
ます。

人生には春の若葉の季節もあれば、夏と秋を経て、冬の枯れ葉の季節
もあるのです。

わび、さび、もののあわれは、そのような円熟した境地があってこそ
味わえるものであり、そのような境地にいたってこそ枯色の美も
味わえるのでしょう。

色にどのような美を見出すかは、その国の文化の成熟度や精神性も
反映されるように思われます。

それでは、鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.36
≪【枯野・枯色】かれの・かれいろ≫を、どうぞお楽しみください。

今日もすてきな一日を!

                           尚 記


       ………○…………○…………○………


紅葉の季節も終わり、木々は葉を落とし、野山はすっかり冬の景色
です。

江戸時代の日本には「枯野見」というものがあったのをご存じですか。

冬の少し暖かい日、郊外に冬枯れの景色を見に出かける行楽行事。

東京の向島あたりが、枯野見の名所だったそうです。

花見ならわかりますが、なにを好き好んで、なにもない荒涼とした
景色を見に行ったのでしょう。


さかのぼると平安時代に、今日ご紹介する「枯野」という色名が
生まれました。

「枯色」ともいいます。

草木の生気がなくなり、かさかさに乾燥した野山を思わせる薄い
茶色で、少しグレーがかっています。


平安時代には以下のような美的な概念がありました。

元は価値があり、生気があったものが衰退し、力を失い、変り果てる
さまを美しいとする概念です。

あらゆるものごとは無常であるとし、しみじみとした哀愁を自然の
なかに見出しました。

これを江戸時代後期の国文学者・本居宣長が「もののあはれ」として
提唱しました。

本居宣長は、その頂点を「源氏物語」だとし、これを機に平安時代
の文学が人々に再評価されるようになります。

江戸の人たちの風流な遊び「枯野見」は、このような背景から人気
になったのかもしれません。


また、江戸前期の有名な俳諧師(はいかいし)松尾芭蕉が、人生の
最期に、こんな句を残しています。

“旅に病んで 夢は枯野を駆け廻る”

ここでもまた「枯野」が重要なポイントになっているようです。

ちなみに「枯野」は冬の季語。


枯れる、にまつわる色名はいくつも存在します。

「枯草色」は枯野よりも少し緑色に近い色味です。

他には「枯葉色」「枯茶」「木枯茶」などもあります。


日本の色名で「朽葉色」も同様ですが、朽ちて衰退していくものに
は、意外なほど多くの色名がつけられています。

紅葉を表す「紅葉色」(もみじいろ)がひとつだけなのに対して
「朽葉色」のバリエーションは「赤朽葉」「青朽葉」「黄朽葉」
「薄朽葉」・・・など、いくつもあるのです。


「もののあはれ」に象徴されるように、当時の日本人には、はかない
ものに対するしみじみとした感情がありました。

そこに細やかな観察する目を向けているのです。

愛情というほど熱くはなく、ただ見ている。現代の私たちにも、
そのまなざしは受け継がれているでしょうか。


今の私たちには、冬になるとクリスマス・イルミネーションの楽しみ
があります。

この時期は、日が短く夜の訪れが早いからこそです。

枯野を楽しめた風流な江戸庶民とは隔世の感がありますが・・・。


みなさま、どうぞすてきなクリスマス、そして年末年始をお過ごし
ください。

2016年も「季節で楽しむ日本の色」をお読みいただき
ありがとうございました。

(※こちらで画像とともに掲載をしています。
 http://ameblo.jp/aurasoma-unity/entry-12226441293.html


       ………○…………○…………○………


鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール

有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/


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