第405号 鮎沢玲子さん(5)「日本の色」:菜の花色
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■ 1.巻頭エッセイ:鮎沢玲子さんの「日本の色」Vol.5
≪【 菜の花色 】なのはないろ≫ (2012,04/04)
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昨日は鎌倉も嵐が吹き荒れました。
まだ桜の花が咲いていないのが幸いでした。
よく、春の嵐っていいますが、台風なみの暴風雨。
今日の朝もまだ風の音は続いていますが、空はすっきりと浄化され
て雲ひとつない青空です。
春の色というと、桜、ピンクというふうに連想がはたらきますが、
和尚アートユニティの玄関先では、クロッカスの黄色い花が散った
あとは、水仙の黄色い花が咲いています。
雪の中から春の訪れを知らせる福寿草も黄色です。
黄色の花を目にすると、これまで冬に閉ざされた気分から、なにか
ぱっと明るい気分にもなりますね。
子供のころには、菜の花にモンシロチョウというのは見慣れた風景
でしたが、そういう普通の景色も目にすることが少なくなりました。
今週の巻頭エッセイは、鮎沢玲子さんの「日本の色」Vol.5
≪【 菜の花色 】なのはないろ≫、どうぞお楽しみください。
尚 記
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『菜の花や月は東に日は西に』
与謝蕪村の句です。
暮れなずむの景色の中で、最後まで明るい光を放つように、目の前
に広がる菜の花畑が思い浮かびます。
のんびりとした春の夕暮れ時。
一日の終わりにふさわしい、平和な風景です。
菜の花色は、ほんの少し緑がかった鮮やかな黄色で、その名が示す
とおり菜の花(菜種の花)の色を指します。
純粋な黄色というより、ほんの少し緑が入った色を指すのは、一面
に咲いた菜の花の間から、葉の色の緑が少しのぞく風景から、そう
なったのかもしれません。
菜種から採れる菜種油は、古くから食用や灯火用に用いられ、日本
人にとって身近な存在でした。
菜種油の色として、緑がかったくすんだ黄色を菜種色(なたねいろ)
または油色(あぶらいろ)と呼び、色名としてはわりに古いもので
す。
いっぽう菜の花色は、明治以降についた名前だそうで、比較的新し
いものです。
江戸時代までは、採れる油にしか色名がついていなかったのに、明
治以降には花の名前の色が生まれたというわけです。
もしかしたら江戸時代までは、菜の花は観賞するより、農作物のひ
とつという見方だったのかもしれません。
イエローは、色の中では最も目立つ色で、遠くからでもすぐに見つ
けることができます。
道路工事中の看板や警告の表示など、注意を促したいときにイエロ
ーが使われるのはそのためです。
小学1年生の黄色い帽子や傘、ランドセルに掛ける交通安全用のカ
バーなど、4月の新入学の時期には、よくこの色を目にします。
街の中では、一面の菜の花畑など目にすることはめったになくなり
ましたが、その代わりに新1年生が身につけたイエローを見ると、
春だなと思うことがあります。
4月は、菜の花と小学生のイエローがよく似合う季節です。
日本語では、未熟なことを「くちばしが黄色い」と表現したり、
「ひよこ」などと言ったりしますが、これらは若くて発展の途上に
あることを、イエローに例えた表現です。
また「黄色い声」と言えば、子どもや若い女性の甲高い声のことを
指します。
「子どもっぽさ」や、「純真さ」は、イエローの輝きにふさわしい
ものです。
オーラソーマにおいてイエローは「個人の意志」を意味する色。
たとえ若くて未熟であっても、自分の意志をしっかりと育てること
・・・人生はここから始まるように思います。
まるで春の野原に菜の花が一面に咲くように、新しく始まる命の輝
きがイエローにはあります。
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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/