第509w号 鮎沢さん(28)「季節の色5」:東雲色
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■ 1.巻頭エッセイ:鮎沢玲子さんの
季節で楽しむ日本の色 Vol.5 ≪【東雲色】しののめいろ≫ (2014,4/2)
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鎌倉では3月下旬にウグイスが鳴きはじめ、和尚アートユニティで
は数日のあいだクロッカスの黄色い花が咲いていたあとは、黄色い
水仙が次から次へと花を咲かせ、今では日ごとにチューリップのつ
ぼみが膨らみつつあります。
先週の日曜日の午前中は雨風の嵐だったのですが、午後に嵐がやむ
と、それまでちらほら花をつけはじめていた桜の花が、嵐が終るの
を待ちわびていたように、いっせいに花を咲かせはじめました。
昨日より4月。もうすっかり春の陽気になりました。
そして、今回の鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 は ≪【東
雲色】しののめいろ≫です。
春の曙に茜色に染まる空の色、明け方にたなびく雲というのは、ど
のような風景なのか、ネットで検索したら、まさにこんな風景だろ
うという写真が掲載されていました。
http://photograph.pro/wallpaper/10021641_HD.html
日本の季節、日本の色、日本の言葉は、心を豊かに感じさせてくれ
ます。
それでは、鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.5≪【東雲
色】しののめいろ≫を、どうぞお楽しみください。
尚 記
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夜が明けはじめ、東の空が薄く紅をひいたように赤みを帯びていく
・・・東雲色はそんな夜明けの空を思わせる、やや黄色味がかった
ピンク色です。
英語の色名では、ドーン・ピンク(Dawn Pink)がこれに
相当します。
ところで東京都江東区には、東雲という地名があります。
これは昭和13年、東京湾の埋立地につけられた名前です。
きっとここが埋立地であることから、東の空に視界を遮るものがな
にもなく、美しい夜明けの空を眺めることができたのかもしれませ
ん。
ほかにこの辺りには、同じく昭和に命名された豊洲、辰巳、有明、
潮見、青海など、美しい名前の地名があり、なかなかのセンスです。
昭和といえば、東雲色は昭和9年の流行色になっています。
それ以前ですと、同じ色が大正3年に「薄曙色」という名で、また
大正10年には「曙霞色」という名で流行しています。
同じ色を「曙色」から「東雲色」にいいかえているところをみると、
「東雲」という言葉が、どうやら昭和初期のセンスにぴったりだっ
たようです。
「しののめ」とは、明け方や暁という意味なのですが、その語源は
趣のあるところからきています。
古い時代の住居には、粗い編み目の明り取りの窓があったのですが、
これを「目」と言いました。
篠竹で編まれたものを「篠の目」と呼び、やがてそれが明り取りそ
のものを指す言葉となります。
さらに「しののめ」は、夜明けそのものを指す言葉に転じ、「東雲」
の文字が当てられたというわけです。
春眠暁を覚えず・・・という漢詩は有名ですが、単に「春の朝は眠
くてなかなか起きられない」という意味ではなさそうです。
夜が明けるのが早くなるので日の出を見ることができない、という
解釈がしっくりきます。
事実、3月1日の日の出の時刻(東京)が6時12分なのに対して、
4月1日には5時30分まで早くなります。
1月と2月の差は10分程度なのに、春になると加速度的に日の出
が早くなるのです。
ときには早起きをして、東雲色の空を眺めてみるのもいいものでし
ょう。
きっと一日を、この色に祝福されてはじめられるような気がします。
(※こちらで画像付きで掲載をしています。
http://ameblo.jp/aurasoma-unity/entry-11811392487.html )
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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/