第540w号 鮎沢さん(35)「季節の色12」:苦色
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■ 1.巻頭エッセイ:
鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.12
≪【苦色】にがいろ≫ (2014,11/5)
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寒さが肌身に感じるようになり、秋から冬の気配へと移りゆく季節
となってきました。
この季節を色で表すとしたら、どんな色として感じますか?
渋柿は秋ですが、渋みと近い苦みも秋から冬に移りゆくこの季節に
ふさわしい感じがします。
共感覚という感覚があります。
ある刺激に対して通常の感覚だけでなく、異なる種類の感覚をも生
じさせる、一部の人にみられる特殊な知覚現象をいう。
例えば、共感覚を持つ人には文字に色を感じたり、音に色を感じた
り、形に味を感じたりする。(Wikipediaより)
季節を色で感じたり、色を味で表現したり、音を色で表現したり、
そういう共感覚を味わってみるのもいいかもしれませんね。
それでは、鮎沢玲子さんの季節で楽しむ日本の色 Vol.12≪【苦色】
にがいろ≫をお楽しみください。
尚 記
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秋が深まってきましたね。
占星術では、今が「さそり座」の季節。
日本の旧暦では、あと数日で二十四節気の「立冬」がやってきます。
冬の足音がもうすぐそこ。
肌寒い日には、温かいコーヒーのほろ苦い味が恋しくなります。
大ぶりなマグカップで両手を温めながら飲みたいですね。
コーヒーといえば・・・もしも「苦み」を色で表現するとしたら、
多くの人が深く渋い茶色を連想するのではないでしょうか。
日本の色名でもそうです。
その昔、日本にはまだコーヒーが存在しなかったのに、この色が苦
みを連想させたことは興味深いことです。
それにしても「苦色」という、味覚から生まれた色名は珍しいです。
「苦色」によく似た色で「羊羹色」がありますが、こちらは対照的
に甘いものの代表です。
苦い色と甘い色がよく似ているというのは、不思議ですね。
実はこの二つには、おもしろい関係があるのです。
羊羹色というのは、歌舞伎において二枚目の冷徹な悪役の衣装によ
く使われたそうです。
血筋は良いのに落ちぶれてしまった、しかしカッコいい浪人などの
役です。
この色は、もとは黒の紋付(正統派の象徴)だった着物が、長く放
浪を続けるうちに、赤っぽく劣化した(素行が悪くなった)ことを
連想させます。
世の女性たちが、正統派でスイートな二枚目だけでなく、苦みの効
いたワルの魅力に惹かれるのは、今も昔も変わりません。
「苦み走ったいい男」という言葉は、顔が引き締まった様子からき
ているそうですが、人生の苦みを知っている男性の持つ、強さや野
性が表現されています。
色彩に関して繊細な感覚を持つフランスではどうでしょう。
調べてみたら、興味深いことがわかりました。
「苦色」に相当する色はカフェ、つまりコーヒー色。
「羊羹色」に最も近い色は、ショコラ(チョコレート)だったので
す。
コーヒーは苦い味の代名詞ともいえますし、日本の羊羹は、フラン
ス人にとってのチョコレートと同義と言っていいかもしれません。
しかし、砂糖やミルクを加える前のショコラの原料、カカオは苦い
味です。
どうやらフランスでも、苦い色と甘い色は関係があるようです。
秋の夜長、カッコいい悪役が登場する映画を堪能するもよし、ショ
コラとコーヒーで夜更かしして、人生の苦みについて友人と長電話
をするもよし、です。
(※こちらで画像付きで掲載をしています。
http://ameblo.jp/aurasoma-unity/entry-11948392275.html )
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鮎沢玲子(あゆさわ れいこ) プロフィール
有限会社「カラーズガーデン」代表。
英国オーラソーマ社公認ティーチャー。
栃木県宇都宮市生まれ 生家は染物屋を営む。
中学校美術教師を経て、インテリアコーディネータとして14年間
住宅メーカーに勤務。
2002年よりオーラソーマ・プラクティショナーとして独立開業。
2006年より公認ティーチャーとして活動中。
http://ameblo.jp/aurasoma-c-garden/
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