第101号 こころのウィルス(2)
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■ 1.巻頭エッセイ:こころのウィルス その2
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オーラソーマは魂のセラピーと言われています。
西洋ではフロイトの精神分析をはじめとする心理的なセラピーがメインであり、
無意識を分析したり開放することで病んだ精神を治療することを主な目的とし
てきました。言ってみればマインドに働きかけてきたといえるでしょう。
西洋の心理学はエゴの科学、自我の解明の科学だともいえます。
東洋では、インドに生まれた仏陀やラマナ・マハリシ(オーラソーマではター
コイズの「私は誰か」という問いかけで有名)、クリシュナムルティ、そして
日本の禅に代表されるように、悟りを求めることを中心としてきています。
悟りというのはマインドを超えた領域で、直接存在と一体となる、というよう
な体験を求めるものともいえます。あるいは、幻想のマインドの世界を超えて、
覚醒した意識に目覚めること、とも言えます。
それは無我の探求だともいえます。
オーラソーマはイギリスに生まれたヴィッキー・ウォールによりもたらされま
したが、このオーラソーマは新しい入れ物にいれた古いワインのようなものだ
と言っています。
それは古代からの英知をイクイリブリアムのボトルとしてこの新しい時代にも
たらされたものだという意味でもあります。
実際、オーラソーマでは肉体(態度)レベル、感情的レベル、心理的、精神的
レベル、そして魂、霊的なレベルまでをも含み、これまでの西洋と東洋の英知
がすべてそのボトルをはじめとするカラーシステムのなかに含まれている、と
もいえます。
さて、この「オーラソーマ通信」99号では、こころのウイルスというテーマ
で、インフルエンザやエイズなどの生物学的ウイルスの実体とコンピューター
ウイルスの実体との比較で、私たちの思考にとりつく「こころのウイルス」な
るものを紹介しました。
それは神経言語プログラミング(NLP)の原理に基づく考え方です。
(「こころのウイルス」ドナルド・ロフランド 英治出版)
NLPというのは1980年代に心理学者リチャード・バンドラーと言語学者で
ありコンピューター技術者でもあるジュン・グリンダーの二人によって提唱さ
れたコミュニケーション理論で、その当時天才といわれていた心理療法家たち
のクライアントへのコミュニケーションの仕方を研究して、そのエッセンスを
抽出して、誰にでも学べるようにモデル化することによって作られた理論です。
その4人の天才的な心理療法家というのは、催眠療法のミルトン・エリクソン、
家族療法のバージニア・サティア、ゲシュタルト療法のフリッツパールズなど
です。
ですから、こころのウイルスというのは、マインドのプログラムのことで、不
具合の生じているマインドのプログラムを、どのようにすれば正常なプログラ
ムとして効果的に作動させることができるのか、というようなことだといえる
でしょう。
場合によっては不具合なマインドプログラムを正常なマインドプログラムに再
インストールしよう、というような考え方だともいえます。
もう少し心理学的な用語を使うと、こころのウイルスというのは、無意識のこ
ころにとりついて、こころの誤作動を生じさせ、こころに不調和をもたらすも
の、ということができます。
そのこころのウイルスの実体は自己否定的、自己破壊的な思考パターンという
ことです。
もともと私たちは生まれた赤ん坊の時には、全く無垢の状態で生まれ、そのと
きはマゼンタの宇宙の愛のなかに生まれ、愛そのものであったともいえます。
赤ん坊は愛らしく、見ているだけで愛情を注ぎたくなってしまうのは、赤ん坊
は愛そのものと一体だからだともいえるでしょう。
それが反抗期などになってくると、憎たらしいガキだ、というようになったり
するのは、そこに自我が芽生えてきて、それが成長してくるからなんですね。
そしてのその自我の形成は両親や教師、友人、社会などの教育や感化、そして
その生育過程でのさまざまな体験によってなされていき、人格を形成していく
わけです。
そしてそれらのすべての根本には、あらゆる人間の行動は苦痛を避けて、快楽
を求める、という動機づけによってなされる、という原理があります。
つまり、苦しくつらい心理状態、例えば怒り、憎しみ、恐怖、嫉妬、無力感、
落ち込みやウツ、羞恥心などを感じるような行動は避けようとしますし、楽し
く満足な心理状態、例えば喜びや安心感、ここちよさや親密感、自由な気持ち
や平和な気持ちや愛情、幸福を得られると思えばそれを求めようとします。
そして何を快楽と感じ、苦痛と感じるかは、その人の生理状態、現実認識に対
する意味づけや解釈、ものの見方などの内的表象、そしてその人の価値観や信
条、期待などとの整合性によるとされています。
私たちは生育過程で学んできた学習によって、ものごとを「快楽」と「苦痛へ
の恐れ」のどちらかに無意識的に判断して分類し、その判断に基づいて行動し
ているというわけですね。
ところがそのものごとを見るということひとつとっても、私たちは現実を見て
いるようでいて、実際には現実を見ていないんですね。
いつも自分の価値判断や信条、期待、欲望などによって現実をゆがめて、色眼
鏡で現実を受け止め、内なる現実をつくりあげています。
そのようなことを精緻に観察、分析し、人間が知覚経験(視覚、聴覚、触覚な
どの五感など)を処理する方法、自分の頭の中にある考えを表現する方法、生
活上の体験を意味づける方法などを研究したのが神経言語プログラムです。
ずいぶん前置きを長く書きすぎてしまいましたが、そこでこころのウイルスの
構造と種類として考えられているのは次の4つが紹介されています。
1 「引き金ウイルス」
特定の外的経験がきっかけとなって、自動的にネガティブな感情を呼び起こ
す「引き金ウイルス」。例えば卵豆腐を食べて腹痛で入院した経験がもとに
なって、卵豆腐を見るだけでそのときの苦痛が思い起こされるとか・・・
2 「思い込みウイルス」
無意識のうちに自分の考え方や意思決定にかせをはめてしまう「思い込みウ
イルス」。まちがった先入観や思い込みで、やる気の喪失や無力感を引き起
こしたりする。その自分の信念や価値観が自分の積極性を妨げているとわか
ってはいても、それが無意識のところでこころのウイルスに侵されているの
で、なかなかその信念や価値観を変えられない。
3 葛藤ウイルス
矛盾を抱えた二つの心理回路によって、内側の葛藤を生み出して行動の一貫
性を乱す「葛藤ウイルス」。二つの心理回路が形成する行動、思想、価値が
互いに矛盾しているときに生まれるので、対立している要素の統合が必要と
なる。
4 殺人ウイルス
前記の「引き金ウイルス」「思い込みウイルス」「葛藤ウイルス」の3つが
複合し、タバコやアルコール、麻薬などの嗜癖や脅迫的な破壊行動、暴力を
引き起こす。
これらのこころのウイルスのなかには、構造的に「プラスの動機」が含まれて
いるので、なかなかやっかいなものではあるようです。
内容について詳しく知りたい方は、「こころのウイルス」(ドナルド・ロフラ
ンド 英治出版)を読んでみてください。
尚.記
もう少しオーラソーマについて知りたい方は、
次にお進みください。